中学生未満

中学生未満

 

中学生になった。
初日の学級委員長を決める会で知らない生徒が僕を指名した。

「地淵君は、消極的だから積極的になるように推薦しました」
いや、できないよ。学級委員長とかできないって。まず僕は仕切ったり命令することができない。人に指図ができないし、人を押しのけて自分の要求を通すこともできないんだ。

 心の中で必死に反論したが、口に出して言う事が出来ず。有無を言わさず多数決で全てが決まる。僕を知っている人も知らない人も賛成に手を挙げた。

「よし地淵。何事も経験だやってみろ」
担任の先生は軽く言う。全生徒の前で決意の言葉を述べさせられた。
その直後泣きじゃくった。できないものはできない。僕に伸びしろなんてない。

「お前学級委員なのに、ちっとも委員長らしくないじゃないか。もっとしっかりしろよ」
自分が進んでなったわけでもないのに批判にさらされる。

 ある日の学級委員会。その日の夕方五時に放送される特撮番組『お面の忍び 春風』が見たかった。
この時代、ビデオもDVDもなく。一度放送を逃したら半永久的に視聴できない。僕は会議が終わるのを待った。でも意に反して、委員会は長引いた。僕は理由も言えずにいきなり号泣した。色めき立つ同級生たち。なだめかかる副委員長。会議はどうなったのか知らない。

 しばらくして、先生から小言を食らう。
「先生も教師という仕事では辛いことがたくさんあるんだぞ」
そこですかさず
「先生は給料をもらっているから」
と言おうとして踏みとどまった。それは言ってはいけないと心が制止した。
言わなくてよかった。言ったらとんでもないことになっていただろう。

 消極的な生徒に度胸を付けさせようとリーダーにさせる手法はなんどか繰り返された。やがて、厄介な役職につけさせる名目でリーダーにさせられたりしている。

 ある程度、自分で成長したくてする人間以外は、この手法は意味がないと思う。
年齢と比べて精神年齢が幼いと感じる人は多いかもしれないのですが、それも発達障害者の特性なのでどうしようもないです。

 その後さすがに対人関係に難のある生徒が学級委員長になることは少なくとも僕のクラスではなかった。もしかすると、この手法で唯一成長できなかったのが僕だったのかもしれな

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ベリー

ASD+ADHD小説やイラストを描いています。50代男。アイコンはスーパー美化というより別人。ロシア語をちまちま勉強。趣味垢@37Zn8N4P4dGvct3    

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